書評

【書評】齋藤保『コミュニティカフェ まちの居場所のつくり方、続け方』

今回は、斎藤保さん『コミュニティカフェ まちの居場所のつくり方、続け方』という本の紹介をしていきます。

皆さん、「コミュニティカフェ」というのをご存知でしょうか。
聞いたことがない、あるいは存在は知っているけれども行ったことがない、という方もたくさんいらっしゃると思います。

コミュニティカフェというのは、コーヒーや食事などを提供するカフェとしての機能があるのはもちろん、まちの人が誰でも気軽に立ち寄って思い思い思いの時間を過ごせる「居場所」としての機能も持ち合わせており、人と人がつながれる、そんな場所です。

今、”居場所事業”というのが注目されています。
しかし、利益よりも地域の課題や、居場所機能としての側面が強いため、採算がとりづらく経営するのが非常に難しいとも言われています。

コミュニティカフェを続けていくにはどうすればいいのか、というところを、様々なコミュニティカフェを例に挙げながら書かれています。

こんな人におすすめ

✔ コミュニティカフェに興味がある。
✔ 居場所づくりに関心がある。
✔ コミュニティカフェの経営を考えている。
✔ コミュニティカフェのアイデアが欲しい。

本書の基本情報

基本情報

タイトル:『コミュニティカフェ まちの居場所のつくり方、続け方』
著者:齋藤保(株式会社イータウン 代表取締役)
出版社:学芸出版社
価格:2,000円+税
ページ数:231p
ISBN:978-4-7615-2740-2

紹介文

まちの居場所をつくろう!

誰もがふらっと立ち寄れ、居心地の良い空間を楽しめる。出会いがあり、交流が生まれ、地域活動やまちづくりにつながることもできる場。そうしたコミュニティカフェの魅力と、運営のノウハウを各地の事例も紹介しながら紐解く。
著者は開設15年目を迎える港南台タウンカフェを主宰し、全国で開設・運営の支援に携わっている。

引用元:『コミュニティカフェ』表紙の折り返しより

おすすめポイント

コミュニティカフェの役割を理解できる。

コミュニティカフェは、通常のカフェと何が違うのか、そしてどのような役割を担っているのか、特に経営に携わる方はそのことを知っておくことが大切だと思います。

現在、コミュニティカフェは「公開性」「社会性」「常設性」「事業性」を備える交流拠点であると定義されています。

「公開性」
⇒特定の目的を持っていなくても気楽に寄れる場であり、誰でも利用できる。

「社会性」
⇒地域と社会につながる機会が用意されている。

「常設性」
⇒特定の場所に立地していて、いつも開いていて、人が常駐している。

「事業性」
⇒民設民営の拠点を成立させるためも収益事業を有機的に組み込んでいる。

コミュニティカフェは、通常のカフェとは違い、必ずしも飲食をしなければならない、という事はありません。どんな人でも、気楽にふらっと立ち寄れるような、居場所となれる場であることが望まれます。

また、人や社会とつながれる場であることも特徴的です。カフェといっても気軽に店員さんや他のお客さんとお話ができるような、開放的な雰囲気が必要です。また、障害のある方や育児に追われて孤独感を抱えている人などを雇用したり、ボランティアや企画に参加できるような仕組みをつくることで、「社会の一員になれている」という感覚を持てるような工夫もされています。

ただ、「社会性」ばかりに重点を置いてしまうと、経営が成り立たなくなり継続できなくなります。せっかく作った「居場所」や「つながり」がなくなっては意味がありません。ちゃんと継続できるだけの収益性を得るという「事業性」もしっかりと考えていく必要があります。

本書は「社会性」と「事業性」のバランスをうまくとるためにどうすればいいか、ということが書かれています。コミュニティカフェの役割を押さえた上で、経営も成り立たせていく方法を考えていってほしいと思います。

事例が豊富で、コミュニティカフェのアイデアが詰まっている。

地域の課題を解決する、収益もつくる…と一口に言っても、実際にどういうことをすればいいか見えてこない人も多いと思います。

この本では、ちゃんと「社会性」と「事業性」を両立させているいくつかのコミュニティカフェの取り組みがたくさん取り上げられています。この取り組みでどのようなつながりが生まれたか、どれくらいの収益を上げられているかといったことが具体的に書かれているので、とても参考になると思います。

いくつか例を紹介しますね。

小箱ギャラリー(港南台タウンカフェ)

地域のハンドメイド作家さんが、コミュニティカフェに設置されている棚に自分の作品を置いて販売をすることができる。棚のスペース利用料、売り上げの数パーセントをいただいて収益をだしている。
月に数回、ハンドメイド作家同士が交流できるような場も設けられている。

就労支援・学習サポート(みやの森カフェ)

特別養護老人ホームに「就労支援の場」を借り、清掃会社から「仕事マニュアル」を指導してもらうことで、制度外の就労支援を行い、収益性を高めている。
また、発達の凸凹のある子どもたち向けの学習サポートを県内に5ヵ所開いて収益を上げている。

飲食以外でも、さまざまな方法で「社会性」の機能ももたせつつ収益性も確保されています。
人が繋がれる、社会で活躍できる…地域のニーズに応じてそんな場を作っていけたら素敵ですよね。地域によって必要とされているものは異なると思います。取材したり、お客さんとのやり取りの中で関係性を築いたりするなかで生まれるアイデアも沢山あるそうです。

コミュニティカフェに来られたお客さんや地域の方々と密に、ときに緩く関わっていき、その地域に合った事業を展開していきましょう!

ちなみに、ここで紹介した「みやの森カフェ」さんは本を出されています。「居場所」に対する考え方や取り組みがとても素敵なのでぜひ読んでみてください!!☟☟☟

コミュニティカフェを続ける方法が見えてくる。

コミュニティカフェは実直に続けることが大切ですが、採算をとるのが難しく、途中で閉めてしまうことになる店舗も多いようです。

本書には、コミュニティカフェの取り組みはもちろん、起業にかかった金額や年間の収支まで載っています。また、補助金や寄付についてもしっかりと触れられており、経営のイメージを持つことができます。

続けていくには収益性だけでなく、人と繋がり「居場所」だと感じてもらえるようにすることも大事で、そのための接客のポイントなども書かれています。

続けるのが難しいからこそ、起業時の事業計画は非常に重要になってきます。収益もあげながらまちの人に愛されるカフェを続けていくための計画を、この本を参考にじっくりと練っていきましょう。

まとめ・感想

私自身、コミュニティカフェに興味があり、作ってみたいなぁという思いはあったものの、収益を上げてお店を続けていくイメージがまったくできずにいたのですが、この本を読んで不可能ではないことが分かって背中を押されて様な気持ちになりました。

人とのつながりが希薄化してきていたり、社会のあまりの厳しさに居場所を持てず自分の存在意義が見えなくなってきたり……そんな問題が深刻化してきているように思います。それを解決するのに、コミュニティカフェの存在、役割はこれからどんどん大きくなっていくのではないかと考えています。

全国的にコミュニティカフェ事業が活発化していったらいいなぁと思います。

ABOUT ME
りゅう
教育学部卒。 Xジェンダー/アセクシュアル/吃音症/強迫性障害 人と人が繋がり、悩みを気軽に話し合えるような場の提供がしたい。 SOGI、障害関連のことをよく考えています。 本を読む人。書評やコラムもぼちぼち書いています。